親の家に手すりを付ける費用と順番|介護保険の住宅改修(上限20万円)と帰省の日に見る場所

親が要支援・要介護の認定を受け、本人の生活に必要と認められる手すりの取り付けは、介護保険の「住宅改修」の対象になります。工事費20万円までが対象で、自己負担はその1割〜3割(20万円の工事で1割負担なら2万円)。ただし基本は、工事費をいったん全額払い、あとから保険の分が戻る仕組み(償還払い)です。最初から自己負担分だけで済む「受領委任払い」は、実施する市区町村や事業者、利用する人に条件があるため、使えるかどうかは窓口かケアマネジャーに確認してください。どちらの方式でも、原則として工事の前に市区町村へ申請するのが条件です。20万円は工事価格の目安ではなく、保険の対象になる上限です。

この記事で分かること

  1. 手すりの工事に介護保険を使ったときの、自己負担の目安
  2. 工事の前に申請が必要な、手続きの順番
  3. 認定がないとき・壁に穴を開けたくないときの方法
  4. 帰省の日に、親と一緒に見ておきたい場所

『りょうと父さん』「玄関の段差」

漫画『りょうと父さん』「玄関の段差」
※この漫画はフィクションです。登場する人物・団体は架空のものです。 タップで拡大
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  1. 1コマ目:実家の玄関。いさおが柱につかまって段差を上がる。帰省したりょうが「柱につかまってるね」
  2. 2コマ目:いさおが手を振って「なに、まだ大丈夫だ」
  3. 3コマ目:居間でスマホを手にしたりょう「手すりっていくらだろう」
  4. 4コマ目:二人で冊子を開き、いさお「一緒に調べてみるか」

手すりの工事に介護保険を使うと、自己負担はいくら?

『りょうと父さん』「20万円までが対象」

漫画『りょうと父さん』「20万円までが対象」
※この漫画はフィクションです。登場する人物・団体は架空のものです。 タップで拡大
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  1. 1コマ目:冊子を手にしたりょう「工事費20万円までが対象」
  2. 2コマ目:いさお「全部ただになるのか?」
  3. 3コマ目:りょう「20万円の工事で1割なら2万円」
  4. 4コマ目:カードを手にしたいさお「負担割合証を見よう」

介護保険の住宅改修は、手すりの取り付けなどの工事費のうち、20万円までを支給の対象としています。20万円は要支援・要介護のどの区分でも同じです。保険から出るのは原則9割(上限18万円)で、所得によって8割(上限16万円)・7割(上限14万円)になります。つまり、自己負担は1割〜3割です。

20万円の工事をしたときの自己負担
  • 1割負担の人2万円保険から18万円
  • 2割負担の人4万円保険から16万円
  • 3割負担の人6万円保険から14万円
  • 20万円を超えた分全額が自己負担例:30万円の工事で1割負担なら、2万円+10万円=12万円

※20万円は「支給の対象になる工事費の上限」です。20万円が戻ってくるわけではありません。表は、対象になる工事で20万円の枠が残っている場合の例です。

親の負担割合が1割・2割・3割のどれかは、「介護保険負担割合証」で確かめられます。要支援・要介護の認定を受けた人に、市区町村から毎年届きます(届く時期は市区町村によって違います)。介護保険の被保険者証と一緒に保管するよう案内されているので、帰省のときに親と一緒に探してみてください。

20万円は「家ごと・一生で」が原則

20万円の枠は、原則として今住んでいる家について、一人あたり生涯20万円です。枠の中なら何回かに分けて使えます。たとえば今回10万円の工事をすれば、残りの10万円分は後の工事に回せます。

例外として、次の場合は改めて20万円までの枠が使えます。

  • 転居したとき(新しい家で、改めて20万円まで)
  • 介護の必要の程度が3段階以上重くなったとき(最初に支給を受けた住宅改修の着工時点と比べて。1回だけ)

「3段階」は、要支援1/要支援2・要介護1/要介護2/要介護3/要介護4/要介護5の6段階で数えます。要支援2と要介護1は同じ段階です。当てはまるかどうかは、ケアマネジャーか市区町村の窓口で確かめるのが確実です。

いったん全額を払う方式が基本

住宅改修は、いったん工事費の全額を払い、後から保険の分が戻る仕組み(償還払い)が基本です。市区町村によっては、最初から自己負担分だけを払えばよい「受領委任払い」もあります(横浜市や札幌市など。市が認めた事業者に頼む場合などの条件があります)。親の住む市区町村で使えるかどうかは、窓口かケアマネジャーに聞いてみてください。

国の通知では、市区町村が、介護保険の対象外の工事や20万円を超える工事について、独自に助成することもできるとされています。親の住む市区町村に助成があるかどうか、窓口で確かめてみてください。

手すり1本の工事費は、家の造りや長さ、壁の下地によって変わります。この記事では金額の目安は書きません。見積もりで確かめるのがいちばん確実です。

相談や見積もりの前に、分かる範囲で次の3点を確認・準備しておくと、話がスムーズに進みます。分からないことは、相談のときに聞けば大丈夫です。

  • 親の介護保険負担割合証で、負担が1割・2割・3割のどれかを見る
  • 過去に住宅改修をしたことがあれば、20万円の枠をいくら使ったか(残りがいくらか)を、市区町村の窓口かケアマネジャーに聞く
  • 手すりを付けたい場所の写真を、帰省のときなどに撮っておく(相談用です。申請に出す写真は、日付が入っているなど撮り方の指定があるので、事業者や窓口に確認してください)

申請の順番:工事の前に申請が必要です

『りょうと父さん』「工事の前に」

漫画『りょうと父さん』「工事の前に」
※この漫画はフィクションです。登場する人物・団体は架空のものです。 タップで拡大
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  1. 1コマ目:チラシを手にしたいさお「まず工事を頼もうか」
  2. 2コマ目:りょうが手を上げて「着工前に相談・見積もり・申請が必要だよ」
  3. 3コマ目:りょうが紙に書き出しながら「先に書類をそろえよう」
  4. 4コマ目:いさおが納得した顔で「順番が大事なんだな」

いちばん気をつけたいのは、工事を始める前に申請することです。札幌市の案内には「改修前の申請がない場合は支給対象外です」と書かれています。国の資料では、やむを得ない事情がある場合は工事の後の申請も認められるとされていますが、まずは「工事の前に申請」と覚えておくのが安全です。

手すりの住宅改修、申請の順番
  1. 要支援・要介護の認定まだなら、市区町村の窓口で申請(地域の高齢者の相談窓口「地域包括支援センター」に相談・代行を頼むこともできます)
  2. ケアマネジャー等に相談どこに、どんな手すりが必要かを一緒に考えます
  3. 事業者を選んで見積もり国の資料では、複数の事業者から見積もりを出すことを促しています
  4. 理由書を作ってもらう「住宅改修が必要な理由書」。ケアマネジャーや地域包括支援センターの担当職員などが作ります
  5. 工事の前に市区町村へ申請申請書・見積書・理由書・工事前の写真(日付入り)などを出します
  6. 市区町村の確認結果を受け取る内容が確認され、結果が知らされます。着工できることを確かめてから工事へ
  7. 工事・支払い償還払いなら、いったん全額を払います
  8. 工事の後に申請領収書・工事の内訳書・工事後の写真(日付入り)などを出します
  9. 支給保険の分(9〜7割)が支給されます

※書類の名前や細かい手順は、市区町村によって違います。ここでは国の資料と、横浜市・札幌市の案内をもとにしています。工事の前の確認は、正式な支給決定ではありません。

事前申請のあとは、結果を受け取ってから工事へ

工事の前に申請すると、市区町村が内容を確認し、結果を知らせます。この事前の確認は、正式な支給の決定ではありません。工事が終わったあとに領収書などを出して、はじめて正式な支給申請になり、実際の工事が適切かどうかも確かめられます。申請したらすぐ着工するのではなく、結果を受け取ってから工事を始めましょう。

理由書は誰が書く?

「住宅改修が必要な理由書」は、国の資料では、介護支援専門員(ケアマネジャー)、地域包括支援センターの担当職員、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上などの資格がある人が作るとされています。親にすでに担当のケアマネジャーがいるなら、まずその人に相談するのが近道です。

親が賃貸に住んでいる、家の名義が親ではないとき

介護保険を使う親本人と家の持ち主が違う場合は、持ち主の承諾書が必要です。親が賃貸に住んでいるときや、家の名義が親ではないときは、早めに持ち主に相談しておきましょう。横浜市の場合、賃貸住宅などでは「住宅改修に関する承認書」と賃貸契約書の写しを出すことになっています。

認定がないとき・工事をしたくないとき

『りょうと父さん』「壁に穴を開けない手すり」

漫画『りょうと父さん』「壁に穴を開けない手すり」
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  1. 1コマ目:廊下の壁に手を当てたいさお「壁に穴はちょっとなあ」
  2. 2コマ目:りょう「工事不要の手すりもある」
  3. 3コマ目:ベッドのそばの置き型の手すりを指して、りょう「ケアマネさんに聞こう」
  4. 4コマ目:手すりに手を置いたいさお「借りられるなら気が楽だ」

まだ認定を受けていない

介護保険の住宅改修を使うには、要支援・要介護の認定が必要です。認定の申請は、親が住んでいる市区町村の窓口でできます。地域包括支援センターに相談すれば、申請の手続きを代わりに行ってもらうこともできます。

認定を受けずに工事をする場合は、介護保険の住宅改修は使えないため、工事費は全額が自己負担になります。工事を頼む前に、認定を申請するかどうかを地域包括支援センターに相談してみてください。

壁に穴を開けたくない(工事をしたくない)

介護保険では、工事のいらない手すりを借りること(福祉用具貸与)もできます。貸与の対象になる手すりは、「取付けに際し工事を伴わないもの」に限られます。どの製品が対象になるかは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に確かめてください。

手すりは、要支援1・2や要介護1の人でも借りられる種目です。

お風呂の浴槽につける手すり

浴槽のふちにはさんで使う浴槽用手すりは、借りるのではなく、介護保険で購入する福祉用具(特定福祉用具)に入っています。介護保険を使うときは、購入する前にケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談し、指定を受けた福祉用具販売事業者から買って、市区町村に申請します。ふつうの店や通販で先に買うと、対象にならないことがあります。購入の支給の対象は、ほかの購入用具とあわせて、原則として1人につき1年度あたり10万円までです(4月から翌年3月まで)。自己負担は1〜3割です。

親の状況別、手すりの選び方
  • 認定があって、壁に付けたい住宅改修(工事費20万円までが対象・工事の前に申請)
  • 認定があって、工事はしたくない工事のいらない手すりを借りる(福祉用具貸与)
  • 認定があって、浴槽に付けたい浴槽用手すりを買う(特定福祉用具・指定の販売事業者から購入して申請・1年度10万円までが対象)
  • 認定がないまず市区町村の窓口か地域包括支援センターに相談。認定を受けずに工事をするなら全額自己負担
  • 20万円を超える工事超えた分は介護保険では出ない。市区町村の助成がないか窓口で確認

帰省の日に、親と一緒に見ておきたい場所

『りょうと父さん』「一緒に見て回る」

漫画『りょうと父さん』「一緒に見て回る」
※この漫画はフィクションです。登場する人物・団体は架空のものです。 タップで拡大
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  1. 1コマ目:浴室の入り口を指さして、りょう「床、すべらない?」
  2. 2コマ目:廊下をまたぐ電源コードを指して、いさお「このコード、よくまたぐ」
  3. 3コマ目:ベッドに腰かけたいさおに、りょう「ゆっくり起きてね」
  4. 4コマ目:玄関で、いさお「次の帰省でもまた見よう」

消費者庁によると、65歳以上の人が自宅で転んだ事故の情報が、5年間(2015年4月〜2020年3月)で275件寄せられています。これは医療機関から集めた事故情報で、全国のすべての事故の数ではありません。そのうち、自宅(庭・駐車場を含む)で、詳しい発生場所が分かっている144件では、「浴室・脱衣所」27件、「庭・駐車場」26件、「ベッド・布団」23件、「玄関・勝手口」22件、「階段」22件が多くなっていました。

東京消防庁の資料でも、令和5年(2023年)に管内で「ころぶ」事故により救急搬送された65歳以上の人は約6万7千人で、その事故の約6割が自宅などの居住場所で起きていました。

消費者庁が呼びかけている注意点をもとに、帰省の日に一緒に見ておきたい場所をまとめました。

帰省の日に一緒に見る場所
  • 玄関・段差・階段手すりや滑り止めがあるか。柱や壁につかまって上がっていないか
  • 浴室・脱衣所床がすべりやすくないか。滑り止めマットがあるか
  • 廊下・部屋の通り道電源コードが通り道を横切っていないか
  • 寝室ベッドや布団から起き上がるとき、つかまる所があるか
  • 夜のトイレまで暗くないか、段差やつまずく物がないか

※消費者庁は、体の機能が落ちないよう、その人に合った適度な運動を続けることや、起き上がるとき・体勢を変えるときは慎重にすることも呼びかけています。

見て回るときは、「危ないからやめて」ではなく「どこが歩きにくい?」と親に聞きながら回ると、親も話しやすくなります。手すりを付けたい場所が見つかったら、写真を撮っておくと、ケアマネジャーや事業者に相談するときに役立ちます。

離れて暮らしていて、「もし家の中で転んだら、誰が気づくのか」が心配なときは、転んだときに誰へ連絡し、誰が様子を見に行けるかも、親と話しておきましょう。離れて暮らす家族向けの見守りの方法は、姉妹サイトのやさしい終活ノートの記事「親の見守りサービスの選び方」にまとめています。

よくある質問

工事が終わってから申請しても、お金は戻りますか?

工事の前の申請が原則です。札幌市の案内では、改修前の申請がない場合は支給の対象外とされています。国の資料では、やむを得ない事情がある場合は工事の後の申請も可能とされていますが、自己判断せず、工事の前に市区町村の窓口かケアマネジャーに相談してください。

20万円は毎年使えますか?

いいえ。原則として、今住んでいる家について一人あたり生涯20万円です。20万円の中で何回かに分けて使うことはできます。転居したときと、介護の必要の程度が3段階以上重くなったとき(1回だけ)は、改めて20万円までの枠が使えます。

親と同居している家族も要介護のときは?

枠は一人ごとに管理されます。ただし、同じ場所の工事を二人で分けて申請することはできません。たとえば共用の場所の工事は、どちらか一人が申請します。

手すりの工事費はいくらくらいですか?

家の造り・手すりの長さ・壁の下地などで変わるため、この記事では目安を書いていません。介護保険を使う場合も、見積もりを取ってから申請します。横浜市では、見積もりを対象工事の区分ごとに改修場所を明確にし、材料費・施工費・諸経費を分けて書くよう求めています。

まとめ

  • 要支援・要介護の認定があり、本人に必要と認められる手すりの工事は、介護保険の住宅改修の対象。工事費20万円までが対象で、自己負担は1〜3割(20万円の工事で1割なら2万円)
  • 親の負担割合は介護保険負担割合証で確かめる
  • 工事の前に申請。ケアマネジャー等への相談 → 見積もり → 理由書 → 事前申請 → 市区町村の確認結果 → 工事 → 事後申請の順
  • 認定がないときは、まず市区町村の窓口か地域包括支援センターへ。工事をしたくないときは、工事のいらない手すりを借りる方法もある
  • 帰省の日には、玄関・浴室・通り道・寝室を親と一緒に見て回る

参考資料

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